HEROES PART 2 アルバム解説

はじめに

403の活動20周年記念プロジェクト最後の作品として4thアルバム「HEORES PART 2」をリリースいたしました。

2015年12月に発売した3rdアルバム「HEROES」から時が流れること5年です。「HEROES」リリース時に「そう遠くない未来に4thアルバム出します」と言っていましたが、「そう遠くない未来」とは5年の歳月を意味することとなってしまいましたすみません┏○

とはいえこの間、実はめっちゃ曲作ってました。様々なジャンル120曲を越える他団体等への楽曲提供を経たことで、403のソングライティングの幅は大きく広がりました(自覚アリ)。なので結果として今回のアルバムはメロディアスかつヘヴィでありつつ、バリエーション豊かでフックの効いた曲がいっぱい入ってると思います。

今回のアルバムで我々が掲げた目標は「いろいろちゃんとやる」です。ミックス/マスタリングはもちろん、アルバムジャケットや歌詞カードなどの良くも悪くもいつもDIY的にやってしまっていた部分を、プロに依頼してひとつの作品としてクオリティの高いものを目指しました。よって、今回403として初めてミックス/マスタリングにプロのエンジニアを起用し、これまで課題としていたプロダクションが格段に向上しました。さらにアルバムジャケットのアートワークや、歌詞カード他アルバムデザインにもプロのデザイナーを起用することで、403が構想した壮大な世界観をあますことなく表現できており、純粋なヘヴィメタルCDとして高い完成度を誇る作品となっています。

また、本来作品というものは作者の込めた意思うんぬんよりも、受け取り手の解釈や想像を尊重すべきという前提があると思います。そこに作者がガッツリ意図を説明するということは、いわば無粋の極みのような気もしますがまずはやってみたいと思います。

アルバムコンセプト

本作は大きく分けて2つのテーマが並行して走っています。

ひとつはアルバムジャケットアートワークの通り、のちにドラゴンスレイヤーとなる青年の物語です。

01.Romancing Candleでその少年の誕生と親からしっかり愛されて生まれてきたことが彼の父親目線で描かれ、09.Tragedyでは彼の想い人が主人公として登場し、10.Dragonslayerではいよいよドラゴンスレイヤーの英雄としての物語が描かれ、彼の物語はここで幕を閉じることになります。

そしてもうひとつは「音楽が人を支える」というテーマです。

これは09.Tragedyの終わりから10.Dragonslayerを聞いた時にピンとくるかと思いますが、「ふたりを支えていたのは想い出の曲だった」という話が読み取れるようになっていますが、そこからの11.Raise your souls!は一転して”曲そのもの”が主人公となって人を鼓舞するというブッ飛んだ設定の曲です。そしてもちろん403の中でこの曲というのは”Southern Cross”のことであり、多くの人の心の支えとなったSouthern Crossという曲が「いつだって俺がそばにいるからがんばれ!」と聞く人みんなに語りかけてる設定となっています。なので、Southern Crossのrevisited版(カバー)をやるならこのアルバムしかなかった、と思っています。「曲だってこうやって成長することだってある!だからがんばろう!」と、Southern Cross自体が行動で示す必要がありましたしね。

「じゃあ02~08の曲はなんなの?」って話になりますが、それは01の主人公である父親(のちにドラゴンスレイヤーとなる子供の父親)が、毎晩眠る前に息子に語って聞かせた、歌って聞かせた古今東西の英雄譚に他なりません。虚実綯い交ぜられたこれら英雄譚を聞いて育った主人公は英雄への憧れを強く抱くようになる…本作はそんなテーマを中心に据えています。

収録曲解説

01.Romancing candle
-Tomorrow’s Hero is you-

「この灯火を君に託そう」
これは人類史以来紡がれてきた、かけがえのない火継ぎの物語。

【概略】
というわけで、アルバムトップを語るはこの方Romancing candle、通称ロマキャンです。
今回の収録曲の順番を決める際に、いつものように「1曲目はインストで徐々に気持ちを盛り上げていって、最高の形でキラーチューンの2曲目に繋いでいく」ということも考えましたが、今回は「いいや、このアルバムではリスナーのみなさんに1曲目、しかもイントロからガツンと衝撃を受けてもらおう!」ということでド頭からガッツポーズが出そうなロマキャンをこの位置に持ってきました。いかがでした?(ドヤッ
ツーバスドコドコ+キャッチーでメロディアスなサビとクワイアで、しっかり緩急を付けるという403楽曲のお手本のような曲に仕上がってます。

【テーマ】
先述の通り、のちにドラゴンスレイヤーとなる青年の幼少期、その父親視点の物語。人間が今まで紡いできた命のリレーを火継の儀式に喩えています。両親からもらった肉体(=ろうそく)と魂(=ろうそくの火)を失うこと無く生き抜き、他のろうそく(異性)と出会うことでお互いのロウを溶かし合って新たなろうそくを作り、そこに火を灯すことで子を成し、火を継いでいく…という403の人生観に基づいています。

【解説】
歌詞の中でいう”You”は403の実子。つまりこれは403が自分の息子にあてた、彼の人生の標となってほしいという願いをこめた曲。いつか道を見失いそうになったら、この曲の存在が糧になるように。(ゆえにhatanakaじゃなくて403がメインボーカルです)
実際、なにかうまいこと行かなくて泣きながら眠りについた息子を撫でながら思いついた歌詞とメロディだったりします。
また、この曲は劇団骸骨ストリッパーの舞台「雷火」のメインテーマとして作った曲をべースにしています。なので、最初は「Like a…」というタイトルだった(サビの入りの「Like a miracle」などに名残がありますね)んですが、ちょっと河村隆一感が強すぎる印象があったのでタイトルを変えたいなーと思った結果、Romancing candleという曲名になりました。 Romacing candleの意味としては ドキドキするろうそく(とそこに灯った火)という意味なんですが= 肉体と魂の意(※恋心でもいいよ!) = 転じて「人」そのものを指す造語です…とここまでカッコよく説明してきましたが、Romancing candleという造語は実はRobert Legacyのソロ活動時のデビュー曲(?)のタイトルだったりします。ちなみに当時の彼に意味を聞いたら「特に意味はない!響きがかっこいいでしょ!」と言っていたのを思い出します。それを聞いたぼくは、彼は天才だなーと思いました(小学生並みの感想)

途中の静かになるところ(大サビ前)のピアノは「Burning Piano」という音源を使ってるんですが、燃え盛るピアノを弾いた音を録音した、という「お前は何を言っているんだ?」的あたおか音源(褒め言葉)を使っています。が、「ろうそくの火」と「火継の儀式」をテーマにしたこの曲には死ぬほどピッタリだったので使いました。いいね!

最後のスプラッシュシンバルはろうそくの火がフッと消えることを表現しています。つまりこの曲の主人公=ドラゴンスレイヤーの父親が死んだ、ということを表現しています。あれ?ワイ死んどるやんけwww死因などはこの先説明するとして、彼の息子が何故ドラゴンスレイヤーなろうと決意したのか、というきっかけになるので覚えておいてください。

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02.Reunion
-An otherworldly Heroine-

さあ、人生を再開しよう。

【概略】
2曲目はReunion。1stシングル収録曲ですが、ミックス/マスタリングが違うので透明感が全然違うのがわかると思います(何気にこの曲とシャドームーンがミックス/マスタリングの大事さが一番わかりやすいですよ、403のミックス版とプロの仕事のビフォアアフター的な意味で)ので、「もう知ってるよこの曲ー」と思ってる人ほど「うおー!!」ってなると思います。
既出ですが、この曲は「Heavenly earth」で独特の世界観を表現したRobert Legacyのフルプロデュース曲で、彼の良さが存分に詰まったすばらしい曲です。ボーカルはもちろん我らがhatanakaくん。今回は特に伸びやかで爽やかな中性的なハイトーンボーカル(ボジョレーヌーボー的に言うと「ここ数年で一番のデキ」)を聞かせてくれてますよ。

【テーマ】
「とある理由」で気の遠くなる年月孤独を余儀なくされた彼女が、孤独から解放され新たなる一歩を踏み出すまでの物語。

【解説】
・イントロと間奏では彼女が囚われていた森をイメージしてます。イントロはどこか重苦しい鬱蒼とした雰囲気を、間奏では平穏で代り映えの無い日常をと、それぞれちょっと違う表現をしているのがポイント。
・曲が進むにつれ『もしかしたら自分を救ってくれるかもしれない(=Save me)』という淡い期待を抱きながらも、決してそれを望んではいけないと思い込んでいた想いを、彼女は思わず吐露してしまう。それがトリガーとなって…からのなんやかんやあって前述の「とある理由」から解放され、輝きを取り戻した人生を再スタートしようとする希望に満ちた物語。
・彼女にはこれから先は明るい未来、見たことの無い世界を楽しんでもらいたいという願いを込めて曲自体の終わり方も出来るだけ簡素(無限に想像出来るように)にしています。
・何度か出てくる氷魔法の音(シャラララーン)って元はピアノの音。Robert Legacy作。すごい。
・hatanakaが歌う前にRobert Legacyが仮歌を入れたバージョンがあって、それを403がいたく気に入ってしまい、しばらく畑中とRobert Legacyのツインボーカルだった時期があった(最終的にラスサビあたりに面影が残っている)。
・実は誰にも言ってないけどバッキングが1箇所だけ違います、おわかりいただけただろうか?

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03.Gigantomakhia

ギリシア神話における宇宙の支配権を巡る大戦。
巨人族ギガースたちとオリュンポスの神々が戦いを繰り広げた。

【概略】
古代ギリシア語で正しく表記すると「Γιγαντομαχία」。
インスト曲が多めのアルバムばかりだった403にしては珍しく、今回のアルバム唯一のインスト曲で、本アルバムでサブタイトルがつかない3曲衆第1の刺客。フルオーケストラ+バンドサウンドという荘厳な曲ですが、もともとは舞台のバトル曲として作りました。RPGのラスボス戦っぽいイメージというオーダーでしたが、そんな雰囲気感じていただけてますでしょうか?

【テーマ】
テーマについては上記ひとことポエムでほぼすべて説明されてしまっている悲しみ。
Wikiとかで「ギガントマキア」で調べてもろてー、見てもろてー、してもろたらわかると思いますが、ヘラクレスマジ破竹の大活躍ですよ。しかもほとんど弓www彼がアーチャー適正高いと言われてるのがよく分かるエピソードですね。

【解説】
もともとは古代ギリシア語で「Τυφών」という曲名でした。え?読めない?すみません「テュポーン」と読みます。
テュポーンはタルタロスとガイアのご子息。ギリシャ神話最大の怪物で、ゼウスを破った唯一の存在でもあります。それくらいのイメージで作った曲なんですが、Herculesの前奏曲として考えた時に「あれ?テュポーン戦ヘラクレス関係なくね?」と思ったので、よりHerculesが活躍した大戦ということでギガントマキアというタイトルに変更しました。

04.Hercules
-The mythic Hero-

自らを襲った悲劇を決してくじけることなく乗り越えてみせた英雄ヘラクレス。
その生き様は時代を越えて、今を生きる者たちに勇気をもたらす。

【概略】
403史上最速の曲。爆速BPM230で疾走しつつ変拍子&ちょくちょく拍子が変わるというプログレ要素があり、それでいてアレンジ的にはゴリゴリにシンフォニックでありながら、音はかなりヘヴィで攻撃的という今までの403曲にはなかった特徴を持つ曲に仕上がっています。ちなみにサビは6/8、6/8、6/8、7/8です。ラストは少しズラしが入りますが、しんどくないレベルに留めました(本当はもっとやりすぎなくらいの変拍子にしたんですが、作ってる自分たちがしんどくなったのでwww)。

【テーマ】
ギリシャ神話の半神半人の英雄、ヘラクレスの生涯を描いた曲。その壮絶な彼の生き様をなぞりながら、「自分も頑張らなきゃ!」と自らを鼓舞する曲。同時に「償えない罪などないんだからちょっとやそっとの失敗でくよくよすんな!」というメッセージも込めてます(自戒の意)。ただ、彼の罪はちょっとやそっとの失敗ではないですし1つや2つでもないですし、12の功業もまぁまぁズルしたり文句言ったりしてるのがなんともまぁギリシャ神話っぽい(人間らしくて良い)なと思いますが、それでもやり遂げたんだからヘラクレスはすごいなーと思います(小学生並みの感想)。

【解説】
この曲を作り始めたのは実は2009年。何気に12年の歳月を経てようやく日の目を見たという曲だったりします。(Zeroよりも構想年数長いことになりますねwww)もともと歌詞も含めて3rdアルバム制作前に完成してはいたのですが、メインボーカルのhatanakaが「これ歌えなくね・・・?かなり練習しないと無理だ」と言い、またギタリストのRobert Legacyも「ギター難しすぎて草。練習します」と言い、伸びに伸びていたという経緯があります。でもみんなガンバってスキルアップする良いきっかけになったし、かっこいい曲として世に送り出すことができて良かったと、今では思ってます。

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05.Shadow of the moon
-The lost Hero-

「何故憎むのか」「何故戦うのか」 問いかけは夜空に吸い込まれたが
代わりに月の影が世界を包み込み 我が心を照らす

【概略】
通称「光彦」。メロディックデスメタル。デス声がメインということで好き嫌いは分かれると思いますが、その分サビのキャッチーさが引き立つのがメロディックデスメタルの良いところ(と個人的には思ってます)。苦手な人はサビまで我慢してみたら気持ちよくなれるかもしれません。(サウナ⇔水風呂の往復で整っちゃうみたいな感じ?)
これもすでに1stシングル収録曲として世に出ていますが、欲が出てかなりいろんなところを変更していたり、いろんなところを歌い直してたり、そもそもミックス/マスタリングでかなりかっこよくなっていたりと、タイトルの後ろに「Album version」を付けないと怒られるレベルで変貌を遂げています。

【テーマ】
単刀直入に言うと、仮面ラ○ダーBLACKに登場するダークヒーロー「シャドーム○ン」をテーマに描いた曲です。いや、世代なんですよ36歳のおっさん的にシャドーム○ンは。
ただ、さすがにそのまま曲名にするにはいろいろギリギリすぎるので、タイトルをShadow of the moonに変更。
シャドーム○ンのいいところ(悲しいところ)は、最後まで悪役というところなんです。もちろん某野菜の星の王子さまや、魔王軍百獣魔団の団長みたいないわゆる「光落ちパターン」も全然いい(むしろトゥンク…)と思うんですけど、彼の場合は最後まで悪役のままというところが本当にいい(いっぱい悲しい)。
悪役は悪役のままでいいんですよ。決して味方にならない、本当の意味で悲劇のダークヒーローです。

【解説】
もともとギター2本の曲でしたが、ミックスの際にエンジニアの橋本さんから「ギター4本にしてみませんか?その方がカッコよくなリますよ!」と提案を受けて急遽Robert Legacyが追加で弾き倒した2本を追加し、結果的にめちゃくちゃヘヴィでアグレッシブなサウンドになったという経緯があります。橋本さんはエンジニアでありギタリストなので、こういう指摘をいただけたのは本当にありがたかったです!足向けて寝れない!!
あと、すでに公開している曲にも関わらずいろいろブラッシュアップしてたり、変わってる部分が多いのですが、一番顕著なのはラスサビ折返しのところですね。我慢の限界を越えてドコドコしてしまいました。そこにRobert Legacyがエッモエモのギターを重ねてくれたおかげでより切なさが増したんじゃないかなと思います。

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06.Misery
-Heroine dances the last dance-

「ワタ シト イツ シオ ニオ ドリ マセ ンカ ?」

【概略】
重々しさよりは速さを重視しつつ、おどろおどろしい雰囲気を持ったスピードメタル。歌詞に込められた切なさと儚さと惨めさを表現するべく意欲的な挑戦が随所に散りばめられた一曲です。女性が主人公の曲なのでボーカリストのhatanakaには「女性っぽく歌ってね!」という無茶な注文をしました(笑)。

【テーマ】
シューティングゲーム「R-T〇PE」のパイロットをモチーフに描いた曲。「バイド」と呼ばれる敵と戦うことを使命としていますが、設定的にはR-T〇PE2とR-T〇PE3を混ぜつつ、R-T〇PE FINALの世界観をイメージしているので、パイロットは女性 in ANGEL PAC(ぜひググってみてね!)です。
たびたび出てくる「Dance」というフレーズはR-T〇PE FINALにおける『対バイド最終兵器』の開発計画、及び作戦名である「Last Dance」から(戦闘機で戦うことを「Dance」と表現するセンスよ!むちゃくちゃエモいよね!)
そもそもMiseryは「みじめ」という意味ですが、この曲は「パイロットが四肢を除去されたダルマ状態になってまで戦うことのみじめさ」を歌ったものではなく、敵である「バイド」との戦いの勝利の果てに自らが「バイド」化してしまい、守りたかった人間たちに銃を向けられてしまうという「みじめすぎる末路」を歌ったものである。(R-T〇PE FINALのBルート「夏の夕暮れ」の結末のイメージ)
そのため、曲の最後に歌詞が乱れ、声も乱れて人ならざるものへと徐々に変貌していくことを表現しています。

【解説】
この曲もギターを途中で2本増やして4本にした曲ですね。「バイド」という気持ち悪い敵(そしてゆくゆくは同一存在になってしまう)の気味悪さを表現するために、単音リフに加えて5thの音を入れたかったのが理由です。おかげでちょっと変な感じのリフになってるでしょ?なってるよね?(確認)
また今回のアルバムデザインを担当した無想りんねさんのアイディアで「これ最後、R-T○PE TACTISの、『キガ ツク トワ タシ』はみたいな表記にしたらおもしろくないですか!?」という素敵な提案を受け、歌詞表記を変更し、さらにR-T○PE FINALでのSTAGE1の複線も歌詞カード冒頭に放り込むというやりたい放題が詰まった曲になりました。(⇒驚愕する)
R-T○PEというゲームはシューティングゲームとしても高難易度で非常に楽しいゲームなのですが、その設定は「悪趣味の極み」のひとこと(もちろん誉め言葉です)。興味がある方はR-TYPEのWikiやニコニコ大百科、YouTubeの動画などを見ると数日間どんよりした気持ちになれますよ!オススメです!!
ちなみに最初「Misery-Misery」というタイトルでした。403的には「ミザリーミザリー」っていう二回繰り返す感じがなんかこう…すごく気に入ってたのですが、ほかのメンバー満場一致で「ダサい」とのことで「Misery」になったよ。ぴえん。

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07.No boy, no girl’s journey
-Hero/Heroine of the age of civil war-

人生は短いから、行けるところまで気の赴くまま旅をしよう。
たとえ辿り着く果が地獄であろうと。

【概略】
男女ツインボーカルのジャパニーズ和ロックです。ボーカルは403にとっての永遠のアイドル、403嫁です。3rdアルバムの「7cm」に引き続き2度目の登場。前回は14歳の恋に恋する少女が主人公だったので「かわいく歌って」というオーダーでしたが、今回は女のぶながが主人公なので「カッコよく歌って」というオーダーをしましたが果たして・・・
メンズボーカルは403です。ここで別のメンバーだと軽くNTR事案なのでさすがに許してくださいwww日本語でしかも歌いやすい音域なので403も好きなように自由に歌ってるのがおわかりいただけるかと思います。

んでんでんで(にゃーん)、403は基本的にメロ先(メロディを先に作る)タイプなんですが、この曲は歌詞先(歌詞を先に作り、そこにメロディを乗せる)でした。演出家のかみざともりひとさんの歌詞のピースを元に403がメロディに乗せるために加筆修正追加を行い、この歌詞の形を作り上げてからメロディを入れていったので、日本語の響き(イントネーション)的にも違和感が少ないどころか、気持ちよく歌えるようになっているハズです。イチオシポイントは「諸行無常」のとこです!

【テーマ】
劇団骸骨ストリッパーの公演「のぶながジャーニー」用に書き下ろした主題歌。
信長が閻魔大王の力で美少女にされてしまって・・・?みたいな話です。いわゆるTSモノです(好物)。
そのタイトル「のぶながジャーニー」の読みをそのままなんとか意味の通る英語にしたいと思って名付けたタイトルが「No boy, no girl’s journey」。意味は「男子なくして女子の旅はなし」。つまり「男の子がいないと女の子の旅は始まらないんだワー!」みたいな意味です。
のぶながジャーニー自体のストーリーは、破天荒で自由奔放すぎた信長に、地獄の門番閻魔大王が激怒して「お前には生きながら地獄を味わってもらおう!」と絶世の美女の姿に変えられてしまったというハチャメチャで楽しいストーリーでした。

信長は男に戻れるのか?はたまた女として生きていくのか!?
これは天下動乱の時代に生きた織田信長、いや、女のぶながの物語!!
(公式紹介文より)

【解説】
前回の3rdアルバム収録曲「7cm」を歌った時もそうなんですが、今回も403嫁はお腹に赤ちゃんがいる状態で歌ってます。なんたる偶然。しかも両方とも特につわりのひどい時期に歌わせてしまって403はとても申し訳ないと思っていたのであった。嫁かわいいよ嫁。
今回のアルバムを仮ミックス段階でいろんな関係者に聴いてもらった中で、何気に1、2を争う人気曲でした。キャッチーだし日本語で歌いやすいっていうのもあるけど、メタルを普段聞かない人、403の曲を普段聞かない人であればあるほど評価が高い印象でした。
今まで舞台用に120曲以上作ってきましたが、舞台上でこの曲が流れて、サビに入った瞬間観客が自然と手拍子をはじめて、同じく観客席にいた403は鳥肌が立ったのを記憶しています。初めて聞いた人の心を動かす、そんな力を持った曲です。

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08.Bloody sword
-The Hero never dies-

心の鎧を解き放つ時、不死身のヒーローは守るべきものの鎧となって悪と戦う。

【概略】
我らがRobert Legacy書き下ろしのシンフォニックに疾走するメロディックスピードメタル。今までの403にはなかったボーカルエフェクトが特徴的。攻撃的なリフとストリングスのハーモニーの中で、高らかに歌い上げるのはもちろん我らがhatanaka。
イントロは今までに無いタイプの攻撃性を持っているので403では結構異端かなと思います。5拍子だし。また、2回目のBメロとラスサビ最後のロングトーンはこの曲の聴きどころのひとつで、hatanakaが魅せてくれたのでぜひともご賞味あれ。そのロングトーンの裏のストリングスもハイライトのひとつで、光と闇の葛藤を表現しています。あとは珍しくRobert Legacyがギターソロを作った(いつもは割と403が無茶なフレーズを強要している)ので、ギタリストが作った気持ちの良いギターソロをぜひ聴いてみてください。

【テーマ】
ダ〇の大冒険「〇ュンケル」をモチーフに描いた曲。曲の冒頭から最初のサビまでは、ボーカルの声がかなりエフェクトかかった声になっています。これは登場時の彼が敵だったことと、ア〇ドしている状態を表現しています。そして主人公たちと出会い、戦いを通じて「心のア〇ド」(なんだこれ?)が解けたため、サビ以降はエフェクトが外れたボーカルとなってます。最初は剣術に絶対的な自信を持ち「俺の剣に貫けぬものはない」と言った矢先パパに折られちゃったので後半は親友から槍を引き継ぎ「俺の槍に貫けるものはない」に変わってます。てのひら返し。なんというかラーハルト大好きマンな感じが出てて良いと思います。歌詞カード唯一の縦書タイトルなのは「ア○ド!」と言ってるところを表現しています。

【解説】
・Aメロから生まれた曲、次にBメロが出来てイントロが出来て、ギターソロまで出来たのにサビは最後まで出て来なかった。本当に直前に固まった感じ。
・この曲を作曲中にアニメ化が決定してなんとタイムリーな!と思いました●
・ギター関係は7弦ですけど現実的なことしかやってないのでコピー難度は403の中ではかなりレベルの低い方だと思う。速いけどね!
・最後のロングトーンはさすがのhatanaka一発OKでした。すごい。
・ボーカル的にもギターソロが好き。
・自分の声が変わるのは最初は抵抗あった、変えなくていい派だった。でも変わってみるとこれはこれでよい!Time after time~と歌いたくなるDalia感。
・歌詞カードの星はバルトス。俺が最初にもらった勲章だのエピソード。ロマキャンというかDragonslayerの物語自体が親子の絆というテーマを背負っているため、きっとヒュンケルの正義の心にはきっとバルトスがやどり続けていたんだろうな、と。

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09.A tragedy

荷馬車に揺られ行く、生贄の旅路
遠い日のあなたを思い出す
そうだ、あなたと一緒に歌った歌を口ずさもう…

【概略】
403渾身のピアノバラード。本アルバムでサブタイトルがつかない3曲衆第2の刺客。とある女性がヒロインとなる曲ですがボーカルは「がんばって女性っぽい声を出して!」というオーダーを受けたRobert Legacyくんちゃんです!とにかく切ない話を切なく歌っている(♂が)曲なので、それを十二分に感じ取っていただければ幸(アッー!!)いです。以下の解説文すべての語尾に「歌ってるのおっさんだけどな」とつけるとすべてが台無しになってしまうので、その点については考えないようにして読んでいただけましたら幸いです┏〇
なおヒロインが最後に口ずさむメロディは次曲Dragonslayerでとても重要な意味を持つことになります。

【テーマ】
※できればDragonslayerの解説を見てから読むことをお勧めします。
次の曲Dragonslayerの前日譚的な曲で、Dragonslayerのヒロインが主人公。
恋仲だった男(=ドラゴンスレイヤーの主人公)が強くなるための修行の旅に出てしまい、それを健気に待ち続けていたが、村の近くの山にドラゴンが出現。若い男たちがこぞって立ち向かうもたくさん殺されて、村はジリ貧状態に。女子供と老人が残された村の村長はおぞましくも最悪な決断をした。それは「村のしきたり」と称して村長が決めた老人(男)と若い女性を本人の意思関係なく結婚させ、子供を産むことを強要される。あげくの果てに子供を産み終えた女性からドラゴンの怒りを鎮めるための生贄に捧げるようになり、本作のヒロインも望まぬ相手との子を出産した後だったため、例外なく生贄に抜擢された。
本作はドラゴンが住む山の中腹の儀式聖堂への道中から、儀式後静かに死を待つシーンを描きます。なお生贄の儀式内容としては血をゆっくりと抜かれてて徐々に死に至るというオーソドックスなもの。
まあざっくり言ってシンプルに悲劇のヒロインです。

【解説】
歌詞の中に盛り込みきれなかった細かい設定は以下の通り。シンプルにむちゃくちゃかわいそうな健気な子です。
・無理やり結婚させられた相手(60過ぎのおじいちゃん)には欠片も愛情を持たず、常に彼女の心のなかには想い人の存在があった(子供のこともあり、好きになろうと努力したこともあったが想い人の顔が思い浮かんでできなかった)。
・「たとえ愛してもいない相手との子供を孕んでも、ただもう一度だけあなたに逢いたい」と思い続けていたが、そんな望まぬ相手との間に出来た我が子が死ぬほどいとおしくてそこにも自己嫌悪してしまう。そんな中生贄を告げる報せがあり、「穢れてしまったわたしは彼に会う資格も無いからちょうどいい」と自暴自棄に。
・子供の行く末も同時に案じている。ちなみに子供には想い人の名前を付けた模様。
・本当は愛の存在証明というテーマを盛り込もうと思ったが、物語の本筋が濁るのでやめました。
・最後のメロディは193回リテイクした。

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10.Dragonslayer
-A tragic Hero-

誰よりも弱かった男は、誰よりも強くなって、そして今ここにいる。

【概略】
シンフォニックかつ力強さと疾走感を兼ね揃えたドラマティックなメタルナンバーで、403とhatanakaのツインボーカル曲です。Aメロ→Bメロ→サビなどのつなぎで決めフレーズが多いのは物語っぽく仕立てるための場面転換的な演出を意図して入れています。
後述のテーマや解説部で詳細が語られますが、とにかく物語として成立する楽曲を目指すため、いろいろな手法や試みを行っています。それゆえに聴くたびに新たな発見があると思いますので、聴けば聴くほどおいしくなっていくスルメ的な側面も持っています。

【テーマ】
ドラゴンを退治する名も無きハンターが主人公のオリジナルストーリー。
幼少期に大好きだった父親が遺書を残し、モンスター退治に行ったっきり帰ってこなかった体験をきっかけに、半ば病的に「強くなければ守れない」という焦りに駆られ、想い人(A tragedyの子)を残して戦いの修行の旅に出る。
誰よりも強くなり、時を経て村へ戻ると、村のそばにすみ着いたドラゴンのせいで村はえらいことに。想い人も生贄に捧げられてしまった後だった。
守るべきものも生きる意味も、すべてを失った主人公だったが、想い人との約束を守るため(+想い人の忘れ形見の未来のため)、ドラゴン討伐に向かう。
ドラゴンとの壮絶な戦いの末、満身創痍の主人公は一瞬死を覚悟するも、その時想い人と歌っていた歌を想い出し、最後の力を振り絞って戦って、そして英雄に…というお話です。(ここの「歌が人の力になる」っていう設定は11.Raise your souls!にもつながる話)

【解説】
・第二次世界大戦時の特攻隊を主人公に描いた403の曲「Zero」のアンサーソング(?)として「One」という曲があり、その設定を活かしながら作った曲。
・「One」という曲は「Zero」に盛り込もうと思って盛り込めなかった「想い人」と「果たされぬ約束」という設定があった。(実は引き算が苦手な403が泣く泣く引き算して作った曲なんです「Zero」は…)設定も舞台も第二次世界大戦下の日本、というところは一緒で、主人公がまったく別の人で、乗る戦闘機も零戦ではなく、川崎 キ45改 二式複座戦闘機 「屠龍」という英語でいうところの「Dragonslayer」戦闘機に乗って日本本土上空でアメリカ軍のB-29に特攻するというお話。(実際に震天制空隊という部隊名と命名されていた)
・これをなんとか別な形でリリースできないか、と思って考えたのがDragonslayer制作のきっかけ。また同じ舞台(第二次世界大戦下の日本)だとZeroと被りすぎるしファンの方々から「また特攻かよ!」というお叱りツッコミを拝受することになるので、じゃあもういろいろ根本から変えてしまおう!!と考えました。その結果、舞台を完全にファンタジーに変え、「屠龍」から「Dragonslayer」というタイトルと主人公の職業を拝借し、「想い人」と「果たされぬ約束」という設定をそこに盛り込んで作った曲。
・ちなみにDragonslayerのストーリーの最後、平和が戻った村には銅像が建てられ、ふたりは銅像という形でようやくひとつになれました、で物語に幕を降ろすのですが、この「ひとつになる」というのが「One」の歌詞から拾った要素でもあります。
・Dragonslayerの主人公は01.Romancing candleでいうところの「You」である男の子が成長した姿である。あれだけ親が「お前が死んで世界が救われる状況だったとしても、それでもお前には死んでほしくない」と願った子だが、そんな親の想いはいつだって届かず、誰かを守るためにヒーローとして死んでいく、という話である。虚しいね。
・今回のアルバムジャケットはこの曲Dragonslayerの主人公がドラゴンと対峙するシーンがモチーフになっているが、前作3rdアルバム「HEROES」のジャケットに写っていた403の実子と同じ位置であることにお気付きいただけたでしょうか?つまりこんなに可愛かった子がドラゴンを倒す悲劇のヒーローに成長した、という物語の連続性をジャケットで表現しています(Twitterでお気づきになられた方がいらっしゃったので嬉しかったです!)。
・01.Romancing candleから続くDragonslayerをめぐる物語はこれで終了となるため、歌詞カードもここまで羊皮紙だったものが焼け焦げ、次のページからはまったく違ったデザインになるところにも注目です。
・主人公の父親(ロマキャンの主人公=403)はワイバーンの群れの討伐に行って帰らぬ人となった。主人公の母親は帰らぬ父親を待ち続けて衰弱し、病死。これらの具体的なエピソードから「強くならなきゃ守れない」という呪いに取りつかれることに。ワイのせいやないか!また、ラスサビで主人公が「そうだな、俺のことはドラゴンスレイヤーとでも呼んでくれ!」と言っているのは、昔ワイバーンを1匹(それも複数人がかりで)倒した主人公の父親が「俺はドラゴンスレイヤーだ!」と息子である主人公に自慢していた逸話に由来しています。最後に力を振り絞る瞬間、彼は父親のことを思い出しその背中が見えたようです。
・実はこのアルバムに収録されているのはDragonslayer(Shut up 403 version)です。ホントは歌詞カードに書いている通り語りがフルで入っていました。→YouTubeの解説動画でぜひとも聞いてください。どっちの方がお好きですか?
・しかしあまりにもクドくなりすぎて、後ろで鳴っているカッコいいギターリフや、大事な大事な想い人とドラゴンスレイヤーをつなぐメロディに耳が行かなくなってしまうので、1ヶ月くらい悩んで歌詞カードのみに表記を残すという手法を採りました。
・なおこの出来事のあと、ヒロインの子供は村を救ってくれた主人公(ドラゴンスレイヤー)に憧れ「強くなければ守れない」という呪いとともに、剣を取る…という救われない未来があったりしますが、それはまた別のお話。
・想い人とドラゴンスレイヤーをつなぐメロディ、二個目の音がスケールから外れてる。これはこれでエモいフックなのですが、ヒロインの舌足らずな歌があんまり上手じゃない「牧歌的なイメージ」を演出している。
・この曲は転調がものすごく多いのは場面転換のためなんですが、一箇所サビからのピアノメロディに繋がる部分はかなり無理のあるつなげ方なんですよ。Fm→Bm基調になるところ。これはヒロインとドラゴンスレイヤーの「すれ違い」の表現です。
・ラスサビで最後の力をふり絞った主人公の結末は以下の通りです。ストーリー仕立てでお楽しみください。

高所より飛び込み、全身の体重を乗せた渾身の斬撃がドラゴンの心臓を貫く。
ついに戦いは決着を迎え、彼は天を仰ぎ勝鬨の雄たけびをあげた。

雷雨はすでに止んでいた。
雨雲の裂け目から射した一筋の陽光が彼を照らす。

そして彼の眼にはあの日約束を交わした時と同じ、
泣きそうな笑顔を浮かべて「おかえりなさい」と言って手を伸ばす想い人の姿があった。

彼は破顔し「ただいま」とその手を取ろうと右腕を伸ばし、
一歩踏み出したのだった…

…その後様子を見に来た村人たちが、
右腕を伸ばしてうつ伏せに倒れている英雄の亡骸を発見した。
満身創痍の亡骸を見るに、想像を絶する死闘を繰り広げたことは明らかだったが、
その死に顔には遠い日の彼のように無邪気で愛くるしい笑顔が湛えられていたという。

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11.Raise your souls!
-Heroes are always with you-

立ち上がる時、立ち向かう時、走り出す時、涙流す時。 
いつだってそばにいてくれたのは、他でもない「大好きな曲」だった。

【概略】
403大好きなコッテコテのシンフォニックパワーメタル。大合唱で大団円な気持ち良い曲。何気に403曲としてはじめてのフェードアウト終わりという珍しい特徴を持ちます(スパッと終わった方が気持ちいいやんけ!というスタンスなので!)。
もともとは劇団骸骨ストリッパーの舞台「蛇骸王METAL」で作った曲で、すでにYouTubeでも公開しておりますが、そこから曲構成も変えていたり、歌詞も日本語から英語に変わって歌ってることも変わっているので、そういった変化を楽しんでいただけると幸いです。

【テーマ】
「音楽が人を支える」という本アルバムの2つ目のテーマにとってキーとなる曲。
・歌詞の中のWE = この曲を聴いてる人が好きな曲 = 例:Southern Cross
・歌詞の中のYOU = この曲を聴いてる人たち(英語では複数形、日本語では単数形で扱う)
つまり、Southern Cross(に限らず好きな曲はなんでも)がこの曲に形を変えて視聴者に「魂を奮い立たせろ!」と鼓舞するというブッ飛んだスタンスの曲です。
「は?」と思うかもしれません。でも思い返してみてください。あなたが立ち上がる時、立ち向かう時、走り出す時、涙流す時、いつだっていちばんそばに寄り添ってくれたのは、他でもない「大好きな曲」じゃありませんでしたか?背中を押して魂を鼓舞してくれたのは、他でもない「大好きな曲」じゃありませんでしたか?ですよね?じゃあ、その人が大好きな曲は、その人にとってヒーローなんですよ。で、そのヒーローがこのRaise your souls!という曲に形を変えて、この曲を聴くすべてのひとに「俺がいつだってついてるからがんばれ!」と伝える、そんなお話です。

【解説】
・Southern Crossのアンサーソング(言いたいだけ)的な立ち位置、というかこの曲の主人公がSouthern Crossという曲そのものなので、内容もSouthern Crossが持つ応援歌的な側面を色濃く反映しています(ゆえにhatanaka&403のダブルボーカルだったりします)。あれから17年経っていろんな経験を積み、あらためて「すべての人への応援歌を作るとしたら?」という自分への問いかけのもと言葉選び(英語の響きを含めて)しています。なので403にしては珍しくサビの音数が少なくシンプルなものになっているのも特徴かな、と。
・4:03~のラスサビ(落ちサビ)シーンは、主人公を待つ大勢の仲間たちが「待ってたぞ、ヒーロー!」って言って手を振っている情景を思い浮かべて作ってます。その後主人公が合流して全員で最後まで未来へ向かって駆け抜けていく…という最高に気持ちいい終わり方をしています。なので、4:26~転調するところはこの曲を聞いている「あなた」が歌って完成するので、ぜひ大声で歌ってください!難しければ口ずさむ程度でお願いします!(ライブでやるとしたらここは絶対観客席にマイク向けるやつです。hatanakaが)
・ラストのオルゴールっぽいパートは、幾億もの楽曲が光の粒となって雪のように永遠に降り注ぐ情景をイメージしています。「誰かが歌い継いでくれる限り、その歌は永遠にその人の中で生き続ける」という403の祈りにも似た願いを具現化したもの。フェードアウトは永遠の表現です。

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12.Southern Cross
(revisited)

たとえ今が苦しくても、それはきっと人生の糧になるから。
歯を食いしばって、顔を上げて、どうかもう一度、運命に立ち向かう勇気を。

【概略】
本アルバムでサブタイトルがつかない3曲衆最後の刺客であり、403が一番好きな403の曲。多くの人に聴いていただき、また多くの人の心に寄り添った曲で、11.Raise your souls!の主人公として想定した曲ということもあり「revisitedするなら今しかないだろう!」ということと、11.Raise your souls!であれだけ偉そうなこと言ってる手前「曲だってこうやって成長することだってある!だから一緒にがんばろう!」と、Southern Cross自体が行動で示す必要があり、今回のアルバムに収録する運びとなりました。やっぱりこの曲は「さっざんくろす!」からはじまらないと!ということで、2011とも全然違うバージョンとなっています。
また、伝説的Flashアニメ「Nightmare City」のクリエイターとして知られるみ~や氏や、本アルバムデザインに携わる無想りんね氏がコーラスとしてゲスト参加しているというのもポイント。特にみ~やさんの「Nightmare City」に「Southern Cross」という形で関った403ですが、17年の時を経て今度は「Southern Cross」に「Nightmare City」のみ~やさんがゲスト参加するって、めちゃくちゃエモくないですか!?

【テーマ】
聴く人すべての応援歌であり続けることを強いられてる曲であり、多くの人が(良い意味でも悪い意味でも)原曲の思い出補正が入っているため、今回revisited版の制作にはかなり悩みました。「2011版もあるやんけ!」という声も聞こえてきそうな気がしますが、東日本大震災に立ち向かう人たちのために、とかなり急ぎ足で作ったバージョンのため、個人的にはかなり気になる部分が多いバージョンだったということもあり、いつか自分の納得の行く形にしたいというのは常々思っていました。
概略ですでに述べた通りの理由でrevisited版を制作することになりましたが、事前に決めたコンセプトは下記の通りです。

・多くの方に評価いただいた原曲の雰囲気を踏襲しつつ、されど活動20周年分の成長と進化を見せたい。
・原曲と同じ土俵で勝負しない。「やっぱ原曲が好き!でもrevisited版も良いじゃん!」という感想をもらえる方向性を目指す。
・原曲が「透明で若々しい」良さがあったので、今回は「熱さと男らしさ」で勝負する方向性に。(=競うな!持ち味を活かせ!というやつですね!)

いかがでしょうか?実際に聴いてみて「revisited版も良いじゃん!」と思ってもらえたら幸いです。

【解説】
・「熱さ、男らしさ、生々しさ」を体現するため、あらゆるところに熱が入ってます。特にバラード部分のボーカルはいつもよりねっとりと歌ってますが、ねっとり感出そうとしすぎてマイク近いのはご愛敬というか熱。また、サビやラスサビを歌う時には万感の想いとともに魂を込めたので、原曲とはまた違った熱さを感じてもらえるかと思います。
・やっぱり「さっざんくろす!」から始まらないとね!ということで原曲準拠。落ち着く。
・Pianoパートは2011ver準拠です。好きです。
・ギターソロは今403がこのフレーズを作るなら…ということでよりテクニカルに再構成したものになっています。お気に召したら幸いです。
・最後の「Our Hands」は実際に手を伸ばして歌ってます。
・み~やさん(あとりんねさん)は「さっざんくろす!」のとこだけだと思うでしょ?残念!実は「Go!」と「Find!」も歌ってるよ!
・あとさざんくろすの歌詞って、サビごとに日本語訳違うの知ってます?原曲の時からそうですが、これは繰り返し言ってるんじゃなくて、何度も何度も本気で言ってるからニュアンスが変わってるということの表現だったりします。17年越しの解説。
・YouTubeで公開済みの原曲の概要欄にも書いてある通りですが、これもう一回みなさんに問いかけたいです。公開当時(403@19歳)のコメントは以下の通りでした。

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歌詞のテーマも「Northern Lights」と同じで、やっぱり「生きること」ですが、今回は別なテーマがあります。この歌詞を書いていた時期が高3の夏から秋あたりで、ちょうど受験前でした。そこで、聞いた人みんなが「ガンバろう!」という気持ちになるような歌詞になってます(多分) 最後のサビの部分に“……”という箇所がありますが、ここにあなた自身の、運命の問いかけに対する「答え」を考えてみてください。

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あれから17年の時が経ちました。 みなさんの答えを聞かせていただけると嬉しいです。

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おわりに

ここまでお読みいただき、まことにありがとうございます。長々とお付き合いいただきましたが、4thアルバム「HEORES PART 2」いかがでしたでしょうか?アルバムのコンセプトやそれぞれの曲がどんな物語かがわかると、最初は「ふーん…」と聞き流していた曲も、また違った印象に聞こえるはずです。なので、いろんな楽しみ方ができるアルバムになってると思ってますので、ぜひとも曲を聴きながら、歌詞を見ながらこの曲解説を読んでいただければ幸いです。

今回のアルバム制作を通じて最も痛感したのは、バンドメンバーの成長です。難しい曲が多かったのでまずそれを演奏できるように、歌えるように練習を重ねたのはもちろん、ミックスマスタリングの作業は曲を分析的に聞く良いきっかけになったと思いますし、各楽曲の物語性を高めるためにあーでもないこーでもないと議論したり、最後の最後にメンバー全員で6時間掛けて歌詞をチェックするWEB会議を実施したり、とにかく本気で向き合った結果、ひと皮ふた皮向けて成長したことを確信しています。

また2020年度は「403の活動20周年」というのがキーワードだったと思います。この20年間いろんなことがありました。20年ってアレですよ奥さん、403デビュー時に生まれた子が成人してるレベルですよ?403のSouthern CrossをNightmare cityで聴いてた中学生が30歳を越えてるってレベルですよ?みなさんはこの20年間いかがでしたか?20歳未満の方は生れてから今までどうだったか?を考えてみてください。みなさんそれぞれいろんなことがあったと思います。403もそりゃあいろんなことがありましたよ。情熱も喜びも悲しみ、出会いも別れも運命も、努力も怠惰も成功も、失敗も痛みも涙も。

でも振り返って見ればすべて今の自分を形作る「糧」になったなぁ、と。Southern Crossの作詞をした時に「人生こうだったらいいな」と願った当時18歳だった403の人生観は正しかったんだなぁ、と今まさに痛感しているところです。

さて、前回の3rdアルバム「HEROES」では、「俺たちはヒーローじゃない、でも俺たちは自分自身の人生のヒーローなんだ」という英雄観を示しました。一方で今回の4thアルバムでは一転、「人々に寄り添い続ける曲こそがみんなにとってのヒーローなんだ」という結論で作品の幕を閉じています。もし5thアルバムが「HEROES PART 3」だとしたら、次はどんな英雄観をどんな形で表現しようか、今からいろんなこと考えてますがこの作業がとっても楽しいんです。

というわけで、「いろいろちゃんとやる」で作った403史上最高のアルバムが、いつまでもみなさんの心を奮い立たせる存在、すなわちみなさんのヒーローであり続けますように、と願いながら、4thアルバム「HEROES PART 2」の解説を締めくくりたいと思います。それではみなさん、また5thアルバムでお会いしましょう!!

403より